先週、少しばかり調べたいことがあって、国立国会図書館に行きました。
調べものの目的は、達成されたような、されなかったようなという感じでしたが、ふと思い立ち、別の調べものに没頭しました。
私が初めて「原稿料」をいただいた証を見つけ出したくなったのです。
大学時代、アパートで一人暮らしをしていた私は、「毎日新聞」を購読していました。
当時の毎日新聞には、「ズバリ!家計診断」という週に一回の連載がありました。
大学に入学して一年半が経ち、一定の生活リズムをつかめたと感じ始めた時期でもあり、男子学生の一人暮らしの家計簿は、珍しいに違いないと確信した私は、一か月間、自身の家計を記録し、集計して、自分なりに分析した文章を書いて投稿しました。
当然ですが、手書きだったのでしょう。
掲載されることを楽しみにしていたある秋の日、1979年11月8日、ついに、私の原稿は、掲載されました。
国立国会図書館で調べ始めた段階では、1979年の秋であろうと予想していました。
大学2年生の秋だったことは記憶していたのです。
国立国会図書館では、アナログの新聞縮刷版の閲覧と、館内端末から毎日新聞のデータベースにアクセスができます。
最初、開架の新聞縮刷版をめくり始めましたが、途方もない作業であることがすぐに分かりました。
データベースで期間をやや広めに設定し、縮刷版で知った連載タイトル「ズバリ!家計診断」を入力すると、ずらりとPDFデータの一覧が出てきました。
そして、その中から、ついに、私の記事を見つけました。
36年と半年前の毎日新聞に掲載された、中村宏隆20歳の投稿です。
縮刷版からコピーを取ってもらい、持ち帰りました。
ややこしい著作権の問題がありますが、紙面をとりあえずアップします。
そして、以下に全文を掲載します。
36年前に地方に住んでいた20歳の学生の生活感を感じていただけると幸いです。
この投稿が掲載された日の朝早く、アパートの共用ピンク電話に実家の母親から電話がありました。
「新聞の家計簿、あんたのでしょ」と。
その後、人生初めての原稿料として、毎日新聞社さまから五千円をいただきました。
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ズバリ!家計診断
H・N(20歳)大学生 静岡市
親頼みはヤメようと思うが…
親元を離れ、ひとり暮らしを始めてから早一年半たちました。男一人の下宿暮らしで、気ままなものです。今まで小遣い帳程度に使ってお金を記録していましたが、一度しっかりと項目別に分類してみようと思いたち、初めてやってみました。これからも続けていき、学生生活を少しでも豊かにするべく工夫してみようと思っています。
親から仕送りを受けないの原則にしていますが、今月のように特別な出費がかさんだ時は、必要に応じてもらいます。蓄えをしておいて、親の負担をゼロにするように心掛けているのですが、思うほど簡単なことではありません。
《食費》ほとんど外食です。時々、思い出したように自炊しますが、かえって割高になってしまいます。今月はどうしたわけが少なくてすみました。主食はパンとめん類です。
《副食費》栄養を全く考慮せず、気のむいたものを買うので検討すべき必要があると思います。お総菜の既製品が手軽なので、しばしば利用します。
《外食費》一日に一、二回下宿の近くの食堂か大学の学生食堂を利用するので、だいたいこのくらいはかかります。
《し好品》たばこと果物です。
《住居光熱費》四畳半の部屋、台所、風呂、トイレは共同で、アパート代一万二千三百円。ガスは下宿内の人数で全使用量を割るのですが、今月はほとんど使わなかったので、お金はいりませんでした。電気代は先月分とまとめて二カ月分。
《衣料費》クリーニング代だけで、そのほかのものは家から適当にみつくろって送ってもらいます。
《医療・衛生費》ふろ代はアパート代の中に含まれているのでかかりません。救急用のバンソウコウとちり紙などです。
《教育費》文房具代
《教養・娯楽費》新聞、本、映画、レコードなどですが、本を毎月一万円以上買うので、全体で一万五千円くらいです。多すぎるとは思いながらも、本を読むのは今だと決めているので、仕方ないところです。
《交際費》先輩や友人と飲みに行ったり、喫茶店へ行ったりした時の出費です。
《交通・通信費》バイクに乗っていますので、そのガソリン代がほとんどです。ガソリンの値上げは直接響きます。あとは切手、電話代。
《備品費》音楽をよく聞くため、カセットテープを買うので多くなります。ほかは、こまごまとした備品です。
《特別費》アマチュア無線を開局するための免許申請手続き費用として六千六百円、バイクの修理費千九百円とかさみました。それとクレジットで購入した腕時計の支払いです。
いろいろやりたいことが多く、趣味的なものにお金が流れてしまいます。毎月六万円以内におさることが課題なのですが…。
人生はまず健康管理から
竹井二三子さんの診断
男子の学生さんが家計簿をつけて支出を有効にという心掛けには感心しました。親から援助を受けずに勉学しようという考えには全く賛成です。学生生活ですから、一般の消費生活とは支出のバランスが違うのは当然ですが、最も支出の多い月謝がこの月はないので、一般サラリーマンのひとり暮らしの生活とあまり変わりないようです。
備品の中のカセットテープと無線の免許申請費は、教養・娯楽費に、備品のこまごまとしたものは住居費へ、バイクの修理費は交通費に、腕時計代は衣料費に整理をすると、費目別のバランスがさらに明らかになります。
教養・娯楽費が二二%を占めているのもやむを得ないとして心配なのは食生活です。
一日の食費が六百五円で、外食が主では三食十分に食べられないのではないでしょうか。人生はまず健康管理からと考えて食費は支出の三〇%くらい予算を組んではどうでしょう。外食の場合も栄養のバランスを念頭に入れて、食事を選んでください。教養・娯楽費は、収入や予算に合わせてコントロールし、学生時代を有意義にすごしてください。(東京都世田谷区・下馬生協専務理事)