第Ⅰ部の連載を終えて「ひとり暮らしの小学生/価値語篇」作者インタビュー -松下幸市朗先生に聞く
Q 自己紹介をお願いします。
松下 北海道札幌市で生まれ、高校を卒業して進学で上京しました。初めは、アルバイトをしていた全国チェーンのファストフード店に社員として就職しましたが、子どもの頃から絵を描くことが好きで、いつかマンガ家になりたいという思いがあり、よく知らない世界だけれどなれるような気がして、仕事を辞め、マンガ家のアシスタントとして経験を積みました。その後、「マガジンSPECIAL」という雑誌で連載をもつことができ、マンガ家になりました。AmazonのKindleで、電子書籍を自分で発行したり、コミックスを出版したりしました。こうした経験が買われ、京都芸術大学のマンガ学科で教員をしています。自分がアシスタントを始めた頃は、アナログでの制作が一般的でしたが、途中から少しずつパソコンを使うようになりました。これから先は、ディスプレーを通してマンガを読む人が増えていくだろうと考え、パソコンを使ったカラーのマンガを積極的に描いています。
Q 第Ⅰ部の連載を終えられて、どのような感想をおもちですか?
松下 このマンガを描き始めたきっかけは、本学の副学長であり、「価値語100 ハンドブック」の共著者でもある本間正人先生から「やってみないか」と声をかけていただいたことです。「価値語100 ハンドブック」の中には、ネタとしてのたくさんの価値語がありますので、4 コマに落とし込んだり、1 回の連載の中で小さな物語をつくることなど、とても描きやすかったです。ただ、もともとの価値語のもつ意味から離れてしまったマンガでは意味がなくなると考えていましたので、連載の回を進め、後半になっていくにつれ、大変な思いもしました。「しばり」があることは、苦しい反面、描きやすい部分もあり、両極端をこの連載期間の中で体験しました。マンガという作品を通して、子どもにプラスの価値を届けられるということは、やりがいもあり、ありがたい思いをもって挑戦させてもらいました。
Q 第Ⅱ部スタートに向けての決意をお聞かせください。
松下 第Ⅱ部では、これまでの経験を生かして、最初に全体を把握して、構成を考えていこうと思っています。今回は、手探りの部分もありましたが、第Ⅰ部を踏まえて、価値語の意味を分かってもらうだけでなく、中身の物語的なおもしろさもレベルアップできるのではないかと思っています。今後とも、よろしくお願いします。
(菊池道場機関誌「白熱する教室」21号所収)
【松下幸市朗(まつした・こういちろう)先生 プロフィール】
1977年北海道生まれ。京都芸術大学マンガ学科専任講師。アシスタントとしてマンガ業界に入り、個人でKindleより出版した「ひとり暮らしの小学生」が宝島社より書籍化しシリーズ累計28万部のヒット。
制作活動と並行し2014年より専門学校での非常勤講師としてマンガ教育を開始。その後、現職。電子書籍の研究・デジタルの特性を活かした新しい時代に対応するカラーマンガ表現に力を入れている。