書籍は再販制度(出版社が書籍・雑誌の定価を決定し、小売書店等で定価販売ができる制度。メーカーによる販売価格の拘束は、基本、禁止されているが、独占禁止法で例外として、著作物再販制度が認められている)によって日本全国で同一価格の定価で販売されています。
「出版ニュース」という業界雑誌の2016年12月上旬号に、東京のある書店の店主による「書店に定価拘束を続ける理由はない?」という記事が掲載されていました。
その中に、二つの興味あることが書かれていました。
一つは、すでに実態として定価販売がなされていない例として、某通販サイトのことを報告していたことです。
「プレミア本」と言われる本の扱いです。
定価よりも少しでも高く売れる本が発生すると、ネット書店の本が買い占められ、書店の店頭在庫が買い漁られ、個人が定価よりも高額の値付けで売りに出すとことが常態化しているということです。
分かりやすい例を一つ。
12月9日現在、菊池省三先生の「ほめ言葉手帳2017(明治図書刊)」は、Amazonでは「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」となっています。
一方で、「¥ 5,196 より 2 中古品の出品」という表示があり、クリックしてみると、「ほぼ新品」というコンディションで「¥ 5,196」と「¥ 5,197」の商品が出品されています。
上記の状況で仕入れ、品切れになった段階で、「すぐ欲しい!」という消費者に、「倍以上の値段ですが、すぐ手に入りますよ」と誘っているわけです。
実態は新品でしょう。ただ新品は価格拘束されますから、「ほぼ新品」というコンディションにして、価格拘束のない古本の世界で、高く売り、利ザヤを稼ぐという方法をとっているのだと思います。
Amazonの中古品コーナーは、読み終わった読者が必要がなくなったから処分のために出品するという「のどかな風景」ばかりではないということです。
二つ目は、リアル書店で本が売れなくなっている現状に対して「(リアル書店は)商品の展示場として出版物の宣伝をして対価をいただく」と提案をしていることです。
関西の教育書を多く扱っている書店の方から聞いた話を思い浮かべます。
「店に長い時間いて、隅から隅までくまなく丁寧に本を見た挙句、何も買わないで店を出て行く人が多くなった」というのです。
「書店が『本の見本が置いてある場所』になっていて、そのあと、家に帰ってからネットでクリックして購入するのでしょうか?」と想像されていました。
リアル書店が本の展示場へと変化しつつあるのでしょう。
ただ、提案されている「対価」をどのように算出し、誰が払うのかは提案されていないので不明です。
仕組みは煩雑そうです。
書店の未来、それはそのまま出版社の未来であり、ネット通販で全体の三分の一を売り上げている中村堂にとっても、大きな課題の一つです。